『八月の鯨』が持つ普遍的な価値は、時代の変化と共にいっそう輝きを増している。CG技術や高速なストーリー展開が主流となった現代の映画産業において、静寂の間と表情の機微だけで人間の感情を極限まで描き切る本作の手法は、まさに贅沢な映画体験と言える。
年老いた姉妹が沖合に現れる鯨を待つ――ただそれだけのシンプルな筋書きの中に、失われた若さへの情熱、死への恐怖、そして残された時間への愛おしさが凝縮されている。映画が持つ本来の表現力を示す最高峰のヒューマンドラマとして、若い世代の映像制作者たちにも計り知れない影響を与え続けている。