ロフトプラスワンの根底にある哲学を理解する上で欠かせないのが、ロフトプロジェクト創業者である平野悠(ひらの・ゆう)氏の存在です。平野氏は自著や回顧録の中で「誰もが平等に酒を飲みながら、本音で議論を交わせる居酒屋のような言論空間を作りたかった」と設立当時の動機を述懐しています。
オープン当初、富坂(文京区)から歌舞伎町へと移転する過程で、数々の伝説イベントが生まれました。オウム真理教問題を巡る徹底討論や、右翼・左翼論客が一堂に会した激論、さらには放送禁止用語が飛び交うお笑いライブなど、既存のマスメディアが敬遠したテーマを真っ向から扱い続けたのです。時には会場前で街宣車が取り囲むような緊迫した事態に発展したこともありましたが、平野氏や歴代店長陣は「表現の自由の防波堤」として対話を止めませんでした。
関係者の証言や当時の取材記録によると、かつては壇上の出演者と客席の間で野次や激論が飛び交うことも日常茶飯事でした。現在は徹底した安全管理が行われていますが、「ここに来れば生の人間が語る剥き出しの真実に触れられる」という熱狂のDNAは、30年以上を経た今も脈々と受け継がれています。