この世紀の事件は、ジャーナリズムや映像制作の分野でも大きな波紋を広げ続けている。中でもドキュメンタリー作品『逃亡者 カルロス・ゴーン』をはじめとする一連の調査報道番組は、事件の表層をなぞるだけにとどまらず、当事者たちの内面に深く切り込んできた。
長年にわたりビジネス界の頂点に君臨したカリスマが、なぜ容疑者として保釈中の身となり、最終的に法を犯してまで国外へ逃亡する道を選んだのか。各国の調査報道ジャーナリストによる多角的なインタビューや未公開映像は、彼が抱いていた「日本の司法制度への絶望」と「自己の正当性を証明したいという強い執着」を炙り出している。カメラの前で見せる表情の移り変わりや、言葉の端々に滲む焦燥感は、ビジネス書の成功体験談では決して描かれない一人の人間の脆弱さを浮き彫りにしている。