脱獄犯・鏑木慶一が本当に求めていたものは、警察の手から逃げ延びる延命ではなかった。物語の終盤で次々と明かされていくピースが噛み合うとき、彼が自らの命を削ってまで走り続けた本当の動機が浮かび上がる。彼が執着したのは、ただ一点。「自らの無実を証明し、救うべき人を救うこと」だった。
逃亡先で出会った人々——彼らは鏑木に名前を偽られながらも、その実直な人柄と温かさに触れ、疑念を抱きつつも心を寄せていく。世間が凶悪殺人犯と決めつける男の「素顔」に触れた者たちが、最後に下す決断。ラストシーンに漂う静寂と切なさは、観る者に「正義とは何か、信じるとは何か」という重い問いを投げかける。