家庭用の炊飯器で松茸ご飯を炊く際、最大の障壁となるのが「火力の立ち上がり」と「密閉構造による水分のこもり」です。土鍋のように直火で一気に沸騰させ、余分な水分を飛ばしながら米を立たせるプロセスとは異なり、炊飯器はゆっくりと均一に温度を上昇させます。この密閉環境下で、松茸の放つ繊細な芳香成分(マツタケオールおよびケイ皮酸メチル)を余すところなく米へと吸着させる触媒として機能するのが、茅乃舎だしに含まれる上質な旨味成分です。
茅乃舎だしの骨格を形成するのは、焼きあご(トビウオ)、鰹節、うるめいわし、そして真昆布。これらがもたらす「イノシン酸」と「グルタミン酸」の相乗効果は、非常に純度が高く、塩角のない丸みを帯びています。市販の顆粒和風だしにありがちな強い化学調味料の刺激や過剰な塩分が存在しないため、松茸が持つ秋の森の湿り気を帯びた気品あるアロマを邪魔しません。だしの旨味が米のデンプン質と結びつき、そこに松茸の揮発性アロマが包み込まれることで、家庭の炊飯器でも輪郭の際立った「料亭の味」が立ち現れるのです。