愛護会問題が炎上する過程で、ネット上にはいくつかの事実誤認や過度な単純化が拡散しました。実態を正確に理解するために、以下の3つの誤解を正しておく必要があります。
誤解1:奈良公園にいるすべてのシカが不適切飼育されていた?
これは明確な誤りです。問題視されたのは「鹿苑」の特別柵に収容されていたシカであり、奈良公園一帯を自由に闊歩している約1,200頭前後のシカは、自生する芝や木の実、観光客からの鹿せんべいを主食とする半野生動物です。公園内のシカが一斉に衰弱していたわけではありません。
誤解2:愛護会が利益を貪るために餌代をケチっていた?
財務諸表や公開された収支報告書を確認する限り、愛護会に巨額の内部留保や役員への不当な高額報酬があったという事実は確認されていません。むしろ、年々増加する保護要請や負傷個体の収容費用に対して財政基盤が脆弱であり、慢性的な資金難と人手不足の中で「安価な穀類飼料で急場をしのぐ」という自転車操業に陥っていたのが真相です。
誤解3:シカをすべて公園に放せば解決する?
特別柵に収容されているシカは、郊外の農地を荒らしたり、市街地で人身事故や交通事故を繰り返したりした個体です。文化財保護法による天然記念物指定があるため殺処分が極めて難しく、かといって公園内に再放牧すれば、近隣住民の生活被害や農業被害が再発します。「隔離飼育するしかないが、殺処分は許されない」という板挟みこそが、過密飼育を生んだ元凶でした。