本作を深く理解する上で欠かせないのが、歴史的な名手たちが残した録音の系譜です。グリエール ホルン協奏曲の名盤を探すなら、まずは以下の演奏を避けて通ることはできません。
筆頭に挙げるべきは、初演者であり献呈先でもあるワレリー・ポリャフ(ボリショイ劇場管弦楽団首席奏者)の歴史的録音です。1951年の初演当時、ポリャフの比類なき妙技に感嘆したグリエールが、彼のためにカデンツァの作曲を委ねたという逸話は有名です。ポリャフの演奏は、ロシア伝統の太くヴィブラートを効かせた情熱的な音色が特徴で、作品が生まれた瞬間の熱量をダイレクトに伝えてくれます。
現代における決定打として世界中で絶賛されているのが、元ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団首席奏者ラデク・バボラークによる演奏です。NHK交響楽団との共演(2012年ライヴなど)をはじめとするバボラークのグリエールは、人間業とは思えない完璧な音程とコントロール、そして圧倒的な音楽性で聴き手をねじ伏せます。難所を難所と感じさせない軽やかさと、第2楽章で見せる息を呑むようなピアニッシモの美しさは、まさに現代最高峰の到達点と言えるでしょう。
その他にも、ヘルマン・バウマンによる豊潤かつダイナミックな名盤や、現ベルリン・フィルのシュテファン・ドールによる知性と推進力に満ちた現代的アプローチなど、聴き比べることで演奏者ごとの解釈の奥深さを堪能できます。