英語圏で生活を始めた日本人が真っ先に直面する違和感の一つが、日常会話における「Be careful」の受け取られ方です。結論から言えば、一般的な別れ際の挨拶としてこのフレーズを使うネイティブスピーカーはほとんど存在しません。
英米の言語文化において、「Be careful」は「具体的な危険に対する注意喚起」を意味する命令文です。足元が凍結して滑りやすい場所を歩いている時や、割れ物を運んでいる最中、あるいは治安の極端に悪いエリアへ足を踏み入れようとしている相手に対して発するのが本来の用法となります。何気ない別れ際に「Be careful!」と告げられたネイティブは、「えっ、何か危険が迫っているのか?」「この道は強盗でも出るのか?」と周囲を見回してしまうのです。
さらに見逃せないのが、命令形が内包する力関係です。親が幼い子どもに対して「車に気をつけてね」「怪我をしないように」と言い聞かせるトーンを帯びやすいため、大人の同僚や対等な友人に対して唐突に使うと、無意識のうちに相手を見下したような響き(インファンティライゼーション)を与えかねません。日常の別れ際における「気をつけて」は、警告ではなく「相手の無事や健康を祈る配慮」であり、そこには全く別の語彙が充てられるべきなのです。