競馬の実況や乗馬のレッスンで頻繁に耳にする「右手前(みぎてまえ)」「左手前(ひだりてまえ)」という用語は、駈歩や襲歩において最後に着地して推進の軸となる前肢(リードレッグ)がどちら側であるかを示しています。
馬がコーナーを曲がる際、内側の脚を前に出す「内手前」をとる必要があります。例えば、左回りの競馬場(東京競馬場や中京競馬場など)のコーナーでは左手前で走らなければ、遠心力に対抗できず外側へ膨らんで大きく減速してしまいます。右回りのコーナーでは右手前が力学的な正解です。
しかし、同じ手前で走り続けると、軸となる肢や筋肉に極度の疲労と乳酸が蓄積します。そのため、優秀な競走馬や訓練された乗馬は、直線の進入時や走行中の疲労度合いに応じて、空中で瞬時に手前を入れ替える「手前変換(フライングチェンジ)」を行います。競馬の最終直線で馬が首を一瞬クイッと傾けて手前を変えた瞬間、一段ギアが上がったように鋭い伸び脚を見せるのは、使う筋肉をリフレッシュさせて推進力を再点火しているためです。