購入を検討する飼育初心者が最も抱きやすい幻想が、「犬や猫のように懐いて甘えてくれるのではないか」という期待です。しかし、実際のケープハイラックスの飼い方難易度は最高レベルに位置します。
野生のケープハイラックスは、数十頭の群れを形成して捕食者の接近を常に警戒しながら生活しています。そのため、本質的に極めて強い警戒心と自立心を持っています。幼獣期から手厚く育てた場合でも、「人間の手から直接おやつを食べる」「飼い主の気配に怯えなくなる」というレベルが現実的な到達点であり、猫のように抱っこされたり撫でられて喉を鳴らすような関係性を築ける個体は極めて稀です。
さらに注意すべきは、防衛反応による噛み付き事故です。ハイラックスの性格はオスを中心に縄張り意識が強く、不用意に手を差し出したり驚かせたりすると、牙のように発達した上顎の切歯で猛烈に攻撃してきます。この切歯は非常に鋭利で噛む力も強いため、成体に本気で噛まれた場合、人間の皮膚や筋肉が深く裂け、縫合手術を要する大怪我につながるケースが後を絶ちません。小さな子どもがいる家庭での飼育は厳禁と言えます。