犬の耳に黒い塊?マダニを絶対に引っ張ってはダメな理由と正しい対処法

犬の耳に黒い塊?マダニを絶対に引っ張ってはダメな理由と正しい対処法

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愛犬の耳に食らいついている吸血中のマダニを見つけた際、驚きのあまり咄嗟に指で引きちぎろうとする飼い主が少なくありません。しかし、獣医療の現場において、この「力づくの引っ張り」こそが最も警戒されています。マダニが宿主に吸血を開始する際、ノコギリ状の歯(鋸歯骨片)を持つ口器を皮膚深くに突き刺し、唾液腺から強力な「セメント様物質」と呼ばれるタンパク質を分泌して犬の組織と自身を強固に接着させています。

このセメント結合は極めて強固です。指や通常の毛抜きで無理やり後方に引っ張ると、マダニの胴体だけが千切れ、「下唇(口器)」や頭部組織が犬の耳の真皮層に残骸として取り残される現象が発生します。耳の皮膚は薄いため、取り残された口器が激しい異物反応を引き起こし、細菌感染による化膿、皮膚壊死、難治性の肉芽腫へと悪化するケースが頻発しています。

さらに深刻なのが、マダニの腹部を指先で圧迫した瞬間に起きる「体液の逆流現象」です。吸血によって大きく膨らんだ腹部は、マダニ自身の胃や腸管そのものです。ここを強くつまむと、注射器のピストンを押すのと同じ原理で、マダニの消化管内に潜む病原菌やウイルスが唾液腺を通り、犬の血流中へ勢いよく注入されます。愛犬を守るための行動が、皮肉にも感染リスクを跳ね上げる直接の原因になってしまうのです。

山口 彩花
著者

山口 彩花

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。