赤犬の苛烈な思想は、一朝一夕に形成されたものではありません。彼の生い立ちと軍歴を辿ると、常に「秩序の崩壊がもたらす悲劇」への強烈な警戒感が根底にあることが分かります。
原作コミックスの読者コーナー(SBS)で描かれた幼少期のサカズキは、ボロボロの衣服をまとい、短刀を握りしめて鋭い眼光で前方を睨みつける姿でした。この描写から、彼が幼少期に無法地帯や海賊被害による極度の混乱・暴力を経験した可能性が示唆されています。無秩序がもたらす地獄を肌身で知っているからこそ、「法と秩序による絶対的支配」への異様な執着が生まれたと推察されます。
オハラ事件での独断専行は、同僚であったクザン(青雉)に決定的な思想的亀裂を生じさせました。そして頂上戦争後、センゴクの引退に伴い勃発したのが、新元帥の座を賭けたパンクハザードにおけるクザンとの10日間に及ぶ決闘です。
世界政府上層部が推すサカズキに対し、海軍内部の多くの信望を集めるクザンが真っ向から反発した理由は、まさに「赤犬が元帥になれば海軍は極端な殺戮組織に変貌する」という危機感でした。島1つの天候を恒久的に変質させるほどの死闘の末、サカズキは勝利し、敗れたクザンにトドメを刺さず見逃しました。この行動には、冷酷無比な男が心の奥底に抱く、かつての戦友への最低限の情義と敬意が垣間見えます。