楽曲タイトルの漢字「接吻」は、日本語の辞書通り「せっぷん」と読みます。日常会話ではあまり馴染みのない言葉ですが、英語の「kiss(キス)」と同義であり、唇と唇を重ね合わせる行為を指す古典的かつ文学的な表現です。
1993年にリリースされた8枚目のシングルにおける正式な作品タイトルは『接吻 kiss』(ジャケットやディスコグラフィによっては単に『接吻』)と表記されています。あえて英語の「KISS」やカタカナの「キス」を単独で使わず、重厚感のある漢字「接吻」をメインに据えた点に、当時の制作陣の鋭い美意識が光ります。
「キス」という言葉が持つポップで軽快なニュアンスに対し、「接吻」という言葉には明治・大正期の純文学を想起させるような濃密な官能性と、どこか淫靡で切ないエロティシズムが宿ります。田島貴男が紡ぎ出すソウルフルで粘り気のあるボーカルスタイルと相まって、単なるトレンディなラブソングとは一線を画す、圧倒的な気品と深みを与える決定打となりました。