三州園ホテルが全国のオカルトファンや廃墟マニアの間で名を馳せた最大の要因は、インターネット掲示板や動画サイトで拡散された「心霊現象」や「いわくつきの噂」でした。「地下室に霊が出る」「過去にオーナーが心中した」「殺人事件の現場になった」といったセンセーショナルなストーリーが独り歩きしましたが、これらの噂に確証たる事実はありません。
地域報道や警察・消防の公的記録を丹念に照合すると、噂の根底にあるのは2007年春に発生した大規模な不審火です。閉館後に無断侵入した何者かの失火または放火によって建物の一部が激しく炎上。黒く焼け焦げた外壁、破壊された内装、剥き出しになった鉄骨が、夜間に訪れた侵入者の恐怖心を煽り、怪談が後付けで創作されていきました。
心理学における「アポフェニア(無関係な現象の中に規則性や意味を見出してしまう認知バイアス)」の典型例であり、荒廃した遺構のビジュアルが人々の想像力を刺激した結果生まれた都市伝説に過ぎません。現場で起きていた実態は、超自然的な現象ではなく、不審者侵入、器物損壊、火災リスクという現実の治安悪化でした。