「VisaやJCBのマークがあれば、クレジットカードと完全に同じ場所で使える」という認識は、現場の実態を知らない大きな誤解です。デビットカードには、システム構造上の理由から利用できない、あるいは制限がかかる決済シーンが存在します。
代表例が高速道路のETCカードと一部のガソリンスタンド、そして月額課金型のサブスクリプションサービスです。
なぜこうした場所でデビットカードが弾かれるのか。その原因は「オーソリゼーション(信用照会)と売上確定のタイムラグ」にあります。
例えば、高速道路のETCレーンは時速数十キロで車が通過する瞬間に通信を行います。このわずか数ミリ秒の間に「銀行口座に残高があるか」を通信で確認し、残高を引き落とす処理を行っていてはゲートの開閉が間に合わず、大事故につながりかねません。そのためETCは「後から確実に請求できる信用(クレジット)」を前提に設計されており、即時引き落としが必須のデビットカードには原則としてETCカードが付帯できない構造になっています。
ガソリンスタンドも同様です。給油機にカードを通した時点では「利用者が何リットル給油するか(総額いくらになるか)」が確定していません。そのため、一部のデビットカード(残高が1万円以上ある場合のみ対応する銀行など)を除き、多くのデビットカードで決済エラーが発生します。
また、不正利用時の補償制度と安全性に関しても重要な差異が存在します。
クレジットカードもデビットカードも、紛失・盗難やスキミングによる不正利用に対して「届出日から60日以内であれば被害額を全額補償する」という規約を設けています。しかし、被害に遭った瞬間の家計への打撃は全く異なります。
クレジットカードであれば、請求明細の段階で不正利用に気づけば実際の口座引き落としを止めることができます。一方、デビットカードは不正利用された瞬間に口座からリアルマネーが消滅します。調査を経て補償金が口座に返還されるまでに数週間から数ヶ月を要することがあり、その間の生活資金がショートしてしまうリスクを考慮しなければなりません。