スタジオに現れた代役・明石家さんまが取った行動は、それまでの怪人劇の常識を根底から覆すものでした。台本に書かれたセリフ通りに悪役を演じるのではなく、ビートたけしという巨大な存在に対し、生身の関西弁と矢継ぎ早のマシンガントークを浴びせかけたのです。
特に現場を震撼させたのが、後のトレードマークとなる「クックックッ」「ファーッ」という甲高い笑い声でした。恐怖を与えるはずの悪魔が、自らの発言にウケて高笑いし、相手のリアクションを封じ込める。この異様なグルーヴ感は、予定調和のコントを求めていた視聴者と制作陣に強烈な衝撃を与えました。
ビートたけしもまた、さんまの予測不能な仕掛けに即座に呼応しました。関東の浅草仕込みのエッジの効いた毒舌と、関西の舞台で鍛え上げられたさんまの超速アドリブ。両者の激しいぶつかり合いは、台本を完全に逸脱した「芸人同士の真剣勝負」へと昇華していきました。本来なら数分で終わるはずの立ち回りが、10分以上にも及ぶアドリブトークの応酬へと変化し、スタジオ内のスタッフの笑い声がそのままオンエアに乗るという、当時のテレビ界では異例の演出が定着していったのです。
この歴史的な収録をモニタールームで見届けた横澤プロデューサーは、高田純次の体調回復を待たずして、ブラックデビル役を正式に明石家さんまへと完全移行する決断を下しました。怪我の功名とも呼べるこの交代劇が、後に『全員集合』を視聴率で逆転する決定打となったのです。