宝くじの受取金が無税であることから、「手に入ったお金は自分のものだから、誰にどう配ろうと自由だ」と錯覚してしまう当せん者が後を絶ちません。ここに、多くの当せん者を税務上の危機に陥れる宝くじ贈与税の落とし穴が存在します。
法律上、非課税措置が与えられているのは「くじの当せん者本人」に限定されています。当せん者が自身の銀行口座に着金したお金を、配偶者、親、子ども、あるいは兄弟姉妹の口座に移動させた瞬間、それは税法上の「個人から個人への贈与」とみなされます。年間110万円の基礎控除を超える金銭の移動には、通常の贈与税が容赦なく課税されるのです。
具体的なシミュレーションでその破壊力を見てみましょう。7億円に当せんした父親が、日頃の感謝を込めて実子に「1億円」をそのまま銀行振込でプレゼントしたと仮定します。この場合、受け取った子どもに課される一般贈与税の計算は以下の通りです。
- 課税価格:1億円 − 基礎控除110万円 = 9,890万円
- 贈与税額:(9,890万円 × 税率55%)− 控除額400万円 = 5,039万5,000円
善意で分け与えたはずの1億円のうち、半分以上が税務署に徴収されてしまいます。もし子どもがその税金を知らずに高級不動産や外車を購入して使い切ってしまっていれば、納税資金が不足して自己破産に追い込まれる悲劇すら現実化します。厳格な当選金の家族分配ルールを守らなければ、幸運のチケットは瞬く間に家族を追い詰める凶器へと変貌します。
さらに見落とされがちなのが、宝くじ当選金の相続税です。「宝くじは非課税」という言葉が独り歩きした結果、遺産として残った資金まで非課税になると信じ込んでいるケースが散見されます。当せん者が亡くなった時点で残存している預貯金や不動産は、通常の資産と何ら変わらず相続税の課税対象となります。当せん金の非課税特権は、「当せん者がくじを受け取るその瞬間」にしか働かないのです。