ミスチルの歌詞といえば、比喩や情景描写を緻密に重ねた文学性の高さで知られています。しかし、この「常套句」のサビで繰り返されるのは、ポップミュージック界で最も使い古されたフレーズと言っても過言ではない「君に会いたい」という言葉です。
当時の音楽雑誌のインタビューや特番ドキュメンタリーにおいて、桜井和寿自身が語った制作エピソードは非常に示唆に富んでいます。桜井は、極限まで切羽詰まった感情や、誰かを純粋に求める心理状態に陥ったとき、人は複雑な比喩表現など思い浮かばず、最も単純で使い古された言葉しか口から出てこないという人間の心理的真実に突き当たりました。
楽曲の冒頭では「『君に会いたい』という言葉が、あまりにありふれていて陳腐に見える」という葛藤を描きつつも、最終的にはその言葉以外に自分を救う術がないという切実な告白へと帰結します。まさに常套句君に会いたいの真意とは、「手垢のついた言葉にこそ、嘘偽りのない純度100%の本音が宿る」というパラドックスの提示にあると言えます。