映画全体が厳しい批評に晒される中にあって、観客から圧倒的な称賛を集めたのが、石原さとみさん演じるハンジ・ゾエでした。
石原さんは役に挑むにあたり、アニメ版でハンジの声を担当した声優・朴璐美氏に自らアプローチを取り、発声方法や叫び声のテンション、巨人を前にした際の狂気と興奮のニュアンスについて徹底的な助言を受けました。巨人を捕獲した際に見せる狂乱の歓喜、メガホンを片手に絶叫する立ち姿、メガネの奥に宿る爛々とした眼光は、「スクリーンの向こうに本物のハンジがいる」と原作ファンを唸らせました。スピンオフとして制作されたdTVオリジナルドラマ『進撃の巨人 反撃の狼煙』でも石原さん演じるハンジが主役を務め、高い完成度を示しています。
一方、主人公エレンを背負った三浦春馬さんの苦闘は凄絶を極めました。原作のエレンが持つ「駆逐してやる」という強烈な復讐心とは異なり、映画版のエレンは「日常に退屈し、壁の外へ逃げ出したいが何もできない無力な若者」として描かれます。この改変により、観客からは「エレンが情けない」「共感しにくい」という批判が浴びせられることになりました。
しかし、三浦さん自身の演技アプローチと肉体表現は傑出していました。クレーンやワイヤーで吊るされながらの過酷なアクションシーン、巨人に対峙した際に見せる恐怖と怒りが入り混じった表情の生々しさは、現場のスタッフを圧倒しました。後年の取材でも、三浦さんが現場で誰よりも原作コミックを読み込み、監督の求める「実写版エレン」の苦悩を体現しようと孤軍奮闘していた姿が関係者から証言されています。
また、ミカサを演じた水原希子さんも、映画オリジナルの「エレンへの失望からシキシマに寄り添う」という心理描写によってネット上で激しい賛否に巻き込まれました。しかし、数か月に及ぶ過酷なフィジカルトレーニングを経て体得したワイヤーアクションのキレと鋭い眼光は、過酷な世界を生き抜く孤高の女戦士の説得力を確かに帯びていました。