音楽メディアの調査において最も読者を驚かせるのが、「B'zシングル売上ランキング」で首位に立つ『愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない』が、近年の「好きな曲アンケート」やライブ現場のリクエストにおいて必ずしも1位にならないという事実です。
この現象の背景には、1990年代特有のタイアップ構造と、その後のライブパフォーマンスによる「楽曲の成長」という2つの力学が働いています。
『愛のままにわがままに〜』がリリースされた1993年は、日本テレビ系ドラマ『西遊記』の主題歌起用とともに、CDシングルが爆発的に売れた時代でした。キャッチーなメロディラインとポップなアレンジは当時の大衆に深く刺さりましたが、その後のB'zはより生々しいハードロック路線やブルース色の強い音楽性へとシフトしていきます。松本孝弘自身がインタビュー等で語っているように、90年代中盤以降は「ライブの熱量をそのまま音源に封じ込める」方向へと進化を遂げました。
その結果、ファン投票で常に首位を争う楽曲となったのが、シングル『ZERO』のカップリング曲である『恋心 (KOI-GOKORO)』や、10枚目のアルバム表題曲『Brotherhood』、そして6枚目のアルバムを象徴する『RUN』です。これらの楽曲は、スタジアムやアリーナで観客全員が一体となるコーラスや独自の振り付け、さらには稲葉浩志によるMCでの語りかけを通じて、ファン一人ひとりの記憶と強く結びついていきました。
一方で、世間的な代表曲として揺るぎない地位を築いた『ultra soul』は、2001年の世界水泳テーマソング起用を皮切りに、四半世紀にわたってテレビ放送やスポーツイベント、各種ロックフェスで演奏され続けました。サビ終わりの「そして輝くウルトラソウル!【ハイ!】」というコール&レスポンスは、ロックファンのみならず老若男女が共有できる国民的儀式へと昇華し、CD売上枚数(約87.6万枚)という枠をはるかに超える影響力を獲得したのです。