ネット上の掲示板や動画共有サービスにおいて、武蔵野稲荷神社が「怖い」「不気味」と恐れられる背景には、一般的な神社ではまず見られない極めて特異な物理的・空間的環境があります。現場を調査すると、訪問者を震撼させる決定的な4つの要素が浮かび上がってきます。
第1の要因は、視覚的な閉塞感と鳥居の配置です。閑静な住宅街の細い路地を進むと、突如として昼間でも薄暗い鬱蒼とした木々と、びっしりと連なる朱色の鳥居が視界を遮ります。日常の生活圏から一歩足を踏み入れただけで外光が遮断され、外界から隔絶されたような錯覚を覚える構造が、人々に「異界へ迷い込んだ」という強い心理的圧迫感を与えます。
第2の要因であり、最も多くの体験談で語られるのが、24時間体制で稼働する監視カメラ網と警告スピーカーの存在です。鳥居の各所や境内の要所には複数の防犯カメラが張り巡らされており、死角がほとんど存在しません。境内に入り写真を撮影しようとしたり、敷地内で長時間立ち止まったり、自転車を押して進入しようとしたりすると、監視カメラ脇のスピーカーから男性の声による厳重な注意放送が大音量で流れます。この無機質かつ即座に監視されている緊迫感が、「見張られている恐怖」として都市伝説化しました。
第3に、後述する民間信仰の時代から続く「加持祈祷」の痕跡です。一般的な神社庁所属の神社が持つ開放的な祝祭感とは異なり、社殿の周囲には人の深刻な苦悩や病気治癒の祈願を受け止めてきた民間信仰特有の重厚な念が残されています。この張り詰めた霊気が、霊感の強い参拝者やオカルト愛好家に「重苦しい」「祟られそう」という誤った印象を抱かせる要因となっています。
第4に、ネット上での過剰な拡散と尾ひれがついた怪談です。「一度入ったら出られない」「境内で写真を撮ると呪われる」といった根拠のない誇張表現がSNS等で増幅され、神域としての厳格な防犯管理が怪奇現象と混同されて消費されてきた経緯があります。