万が一の誤飲・誤食事故が発生した場合、迅速な病態理解と初動が生死を分かつことになります。特に家庭内で頻発する2大中毒事故について、そのメカニズムと対策を頭に叩き込んでおく必要があります。
第1に警戒すべきは、猫ネギ類中毒の症状と危険な理由です。タマネギ、長ネギ、ニラ、ニンニクなどのヒガンバナ科ネギ属に含まれる有機硫黄化合物(アリルプロピルジスルフィド等)は、赤血球内のヘモグロビンを酸化させ、ハインツ小体と呼ばれる変性タンパク質を形成します。これにより赤血球が次々と破壊(溶血)され、重篤な「ハインツ小体性溶血性貧血」が引き起こされます。
摂取直後ではなく、1〜5日ほど経過してから、元気がなくなる、可視粘膜(歯茎や結膜)が白くなる、赤褐色の尿(血色素尿)が出る、黄疸が出るといった症状が顕在化します。加熱しても毒性は一切消えないため、鍋料理のスープやすき焼きの残り汁を舐めただけでも中毒に陥る危険があります。
第2に、猫チョコレート誤飲の緊急対処法です。カカオ豆に含まれるメチルキサンチン誘導体である「テオブロミン」は、中枢神経系や心筋を過剰に刺激します。体重4kgの猫の場合、高カカオチョコレートならわずか数グラムで中毒量に達し、興奮、不整脈、筋肉の硬直、痙攣発作を起こし、急性循環不全で急死する恐れがあります。
もし愛猫がこれらを口にしてしまった場合、飼い主が自宅で塩水やオキシドールを飲ませて無理に吐かせる行為は絶対に避けてください。食道粘膜の重篤な化学熱傷や誤嚥性肺炎を併発し、かえって致命傷になりかねません。即座に動物病院へ連絡し、「いつ、何を、どのくらいの量食べたか」を伝え、獣医師の指示に従って胃洗浄や活性炭の投与、輸液治療を受ける必要があります。