サバクトビバッタの実態を日本国内に広く伝えた第一人者として知られるのが、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)の昆虫学者・前野ウルド浩太郎氏です。同氏の著書『バッタを倒しにアフリカへ』などで描かれたモーリタニアをはじめとする西アフリカでのフィールドワーク手記は、机上の理論では測れない過酷な現実を浮き彫りにしています。
現地からの報告によると、発生地におけるサバクトビバッタの群れは「天災そのもの」と形容されます。数億匹の成虫が一斉に羽ばたく音は、まるでジェット機や激しい豪雨のような地響きを伴い、太陽光を遮って真昼の空を薄暗く変貌させます。樹木に止まった無数のバッタの重みで、頑丈な枝がへし折れる光景も珍しくありません。
さらに防除の現場では、広大すぎるサハラ砂漠の中で「どこで最初の発生が起きたか」を特定すること自体が至難の業です。砂漠の奥地で人知れず雨が降り、草が生え、バッタが相変異を遂げて大群となった段階で初めて人間が気付くという後手後手の構造が、長年対策を困難にしてきました。
研究者や防除隊が過酷な砂漠環境で砂嵐に耐えながら追跡調査を行う姿は、蝗害対策が単なる生物学的研究にとどまらず、過酷な自然との地道な闘いであることを如実に物語っています。