ブラッドレイの周囲を取り巻く家庭環境にも、作品の大きなテーマが色濃く反映されています。表向きは聡明で愛らしい養子として振る舞っていた息子セリム・ブラッドレイですが、その正体は最古のホムンクルスにして「傲慢」を司るプライドでした。ブラッドレイにとってセリムは家族ではなく、お父様の計画を監視・遂行するための冷徹なビジネスパートナーに過ぎませんでした。
一方で、一般人である妻(ブラッドレイ夫人)に対する感情は極めて異質なものでした。自らの出自、名前、地位、国家の行く末に至るまで、人生のすべてをお父様によってお膳立てされてきたブラッドレイが、生涯でたった一つだけ自分の意志で選び取った存在が彼女でした。
反乱分子に人質に取られかねない状況下でも、彼は妻に対して一切の欺瞞を抱かず、一人の人間として深い敬意を払い続けていました。後にロイ・マスタングらから妻への遺言を問われた際、「私の妻に遺言など必要ない」「王の伴侶とはそういうものだ」と言い放った場面は、愛憎や甘えを超越した二人の絶対的な信頼関係を象徴しています。