「たたき」という名称から、身をミンチ状になるまで包丁で叩き潰してしまうケースが見受けられますが、これは大きな誤解です。アジのたたき切り方の本質は、「魚の角(エッジ)を残した細切り」と「薬味の密着」にあります。
まず、皮を引いて中骨を骨抜きで丁寧に取り除いたアジの半身を、幅7mm〜8mm前後の短冊状(細切り)にカットします。刃を前後にノコギリのように動かすのではなく、包丁の刃元から刃先へ向かってスッと手前に引くように一刀で切ることで、細胞断面が潰れず、噛んだ時の心地よい弾力と瑞々しい舌触りが生まれます。
次に用意するのが、アジの濃厚な脂を受け止めるアジのたたき薬味の黄金比です。プロの厨房で定評のある配合バランスは以下の通りです。
- アジの正味重量:100g(標準的な中サイズ1尾分)
- 大葉(青じそ):3〜4枚(細切りにして水にさらして水気を切る)
- みょうが:小1個(縦半分にしてから薄い小口切り)
- 小ネギ(万能ねぎ):2〜3本分(細かな小口切り)
- おろし生姜(または刻み生姜):小さじ1(約5g)
これら薬味の総量をアジの身に対して20%〜25%の重量比に設定するのが最もバランス良く仕上がる黄金律です。ボウルやまな板の上で刻んだアジと薬味を合わせ、包丁の刃元でトントンと軽く数回押し合わせる程度で十分です。薬味の精油成分がアジの脂と絡み合い、噛み締めるたびに爽快な香りが口いっぱいに広がります。
合わせるタレにも複数のアプローチが存在します。王道を行くなら、キレのあるアジのたたき生姜醤油が魚の甘みを引き立てます。脂乗りが非常に良い初夏から秋のアジには、柑橘の酸味で後味をすっきりさせるアジのたたきポン酢が抜群の相性を誇ります。コク深い味わいを求めるなら、後述する味噌を隠し味程度に少量忍ばせるスタイルも高い評価を得ています。