インターネット上で流布している炊飯ノウハウの中には、科学的根拠を欠いたまま拡散されている誤情報も散見されます。その最たるものが「急いでいるときは熱湯を入れて早炊きすればすぐ炊ける」という言説です。
これは調理科学的に明確な誤りです。お米が水を吸い込む「お米一合 吸水時間」は、水温によって劇的に変化します。常温(20℃前後)であれば30分、水温が下がる冬場(10℃以下)では60分から90分の浸漬(しんせき)時間を取らなければ、デンプンの中心部まで水分子が入り込みません。
いきなり50℃以上の熱湯を注ぐと、お米の表面のデンプンだけが瞬時に糊化して膜を張ってしまい、内部への吸水が完全にストップしてしまいます。その状態で炊飯熱を加えると、外側は形崩れしてドロドロなのに、中心には硬い芯が残るという最悪の炊き上がりになります。ふっくらとした米粒に仕上げたいのであれば、熱湯ではなく冷水や氷水を使い、低温からじっくり吸水させてから加熱するのが、米穀業界の定説です。