ネット上で長年囁かれ続けている「進撃の巨人はジャンプの持ち込みで落とされた」という言説は、紛れもない事実です。2006年、当時19歳だった諫山創氏は、専門学校九州デザイナー学院在籍中に執筆した読切版『進撃の巨人』(通称・0巻収録作)の原稿を手に、東京・神保町にある集英社の週刊少年ジャンプ編集部を訪れました。
テレビ番組の特番インタビューや自著の関連証言によると、応対した編集者は諫山氏の原稿を一通りめくった後、画力の拙さを率直に指摘したといいます。それだけでなく、次のような趣旨のアドバイスを与えました。
「設定や演出の迫力は面白い。でも、うちでやりたいなら『漫画』ではなく『ジャンプ』を持ってきてほしい。もっとジャンプの読者にウケるようなキャラクターや、アンケートで勝てる王道展開に変えて描き直してこないか」
編集者側としては、新人の素質を認めつつ自誌のフォーマットに合わせた親切な指導のつもりだったと推察されます。しかし、諫山創氏はこの言葉を「自分が表現したい根源的な恐怖や絶望を、ジャンプの型に押し込めろという否定」と受け止めました。「自分の描きたいものを曲げてまでジャンプに合わせるつもりはない」と判断した諫山氏は、その足で集英社を後にし、護国寺にある講談社へと向かったのです。