この現象を加速させたのは、間違いなくネット空間における視覚情報の拡散力だった。始まりは5ちゃんねるの匿名掲示板群だ。目撃日時や出現ルートがリアルタイムで共有され、スレッドは連日賑わった。事態が次のステージへ進んだのは、スマホカメラの普及とX(旧Twitter)の隆盛である。通行人が遠巻きに撮影した画像や動画が次々とアップロードされ、彼の存在は一気に可視化されていった。
さらにYouTubeには、彼を追いかけた検証動画や目撃映像のアーカイブが無数に投稿された。ネット空間において、彼は実在する生身の人間ではなく、一種の「インターネット・ミーム」として記号化されてしまったのだ。スマホの画面越しに物珍しさで消費される構図は、監視社会とSNSの無神経な暴力性を浮き彫りにした。娯楽としてシェアされるバズの裏で、重篤な状態にある人間の尊厳が踏みにじられていた現実は重い。