『奇界遺産』の名を大衆に決定づけた最大の契機は、TBS系列で放送された『クレイジージャーニー』への出演です。MC陣(松本人志氏、設楽統氏、小池栄子氏)を唸らせた数々のTBS放送回では、テレビの枠組みを超えた過酷なロケ地が次々と紹介されました。
番組内で特に強烈な爪痕を残したのが、旧ソ連時代の核実験場であるカザフスタンの「セミパラチンスク」、死の火山地帯と呼ばれるエチオピアの「エルタ・アレ」、そして世界遺産でありながら外界から隔絶されたイエメンの「ソコトラ島」への遠征です。画面越しには飄々とした佇まいを見せる佐藤氏ですが、関係者の証言や当時の取材手記によれば、現場は一歩間違えれば命を落としかねない極限状態の連続でした。
例えば、武装勢力が割拠するエリアでは、現地の軍事検問を通過するために米ドル札による非公式な通行料の交渉を余儀なくされたり、気温50度を超える猛暑環境でカメラ機材の電子基板が熱暴走を起こし、氷嚢で冷やしながら撮影を続行したりといった過酷な裏話が明かされています。テレビカメラが捉えきれなかったそうした死線の数々こそが、写真集の一コマ一コマに圧倒的な緊張感と密度をもたらしています。