もうひとつ、見逃してはならないのが「クレヨンしんちゃん トラウマ回」と結びついた、ネット特有のホラー創作です。『クレヨンしんちゃん』という作品は、時折子ども向けとは思えないほど本格的で背筋が凍るホラー回を放送することで知られています。「呪いのフランス人形」や「幼稚園の階段」など、公式が意図して制作した恐怖回が視聴者の心に強烈なトラウマを刻んできました。
そうした土壌の上に生まれたのが、まことしやかに囁かれる「ボーちゃん 溺れる 都市伝説」です。この都市伝説の筋書きは極めて悪質かつダークなもので、「カスカベ防衛隊で川遊びをしていた際、ボーちゃんが溺れて命を落としてしまい、今みんなが見ているボーちゃんは成仏できない幽霊である」というもの。これは、かつてネット上で大流行した「しんのすけは既に交通事故で他界しており、みさえの日記の妄想である」というデマと全く同じ構造を持っています。
この怪談に信憑性を与えてしまったのが、「ボーちゃん 本名 謎」とされるキャラクター設定です。しんのすけ(野原しんのすけ)、風間くん(風間トオル)、ネネちゃん(桜田ネネ)、マサオくん(佐藤マサオ)と、カスカベ防衛隊の全員がフルネームと家族構成を明確に開示されている中、ボーちゃんだけは母親の姿がシルエットでわずかに出た程度で、本名も親の職業も公式に非公開のままです。
この徹底した「情報の空白」がネットユーザーの想像力を過剰に刺激し、「公式が本名を隠すのは、過去に水難事故で記録から抹消されたからではないか」という荒唐無稽な尾ひれをつけ、噂を一人歩きさせてしまったのです。