儀式や祝宴の席で万歳三唱を行う際、最も議論になりやすいのが「手のひらの向き」と「腕の挙げ方」です。ネット上では「手のひらを相手に向けると降伏や投降のポーズになり、皇室に対して不敬にあたる」といった説が広く流布しています。
結論から述べると、儀典関係者や伝統礼法における共通見解として、万歳三唱の手のひらは「内側(左右の手のひらが向かい合う形)」にするのが自然かつ正式な所作とされています。
人体の解剖学的構造からも、直立不動の姿勢から両腕を真上へ垂直に引き上げた場合、手のひらは自然と内側を向きます。手のひらを正面(前進方向)へ向けようとすると、肩関節を無理に外側へ回旋させる必要があり、腕が「ハの字」に開いて威儀が崩れてしまいます。
万歳三唱の美しい所作の要点は以下の3点に集約されます。
第1に、背筋を伸ばして直立し、踵(かかと)をつけて爪先を自然に開く姿勢をとること。第2に、発声とともに両腕を耳の横へ真っ直ぐ垂直に伸ばし、手のひらは互いに向き合うように内側へ向けること。第3に、両腕を下ろす際は一度気をつけの姿勢に戻し、これを呼吸を合わせて三回繰り返すことです。
俗に言われる「降伏のポーズ」という批判は後世のこじつけに過ぎない側面もありますが、見た目の美しさと身体の構造の双方から見ても、手のひらを内側に向ける形が最も品格を保てる所作であることは間違いありません。