報道各社が伝える犬の咬傷事故ニュースを検証すると、大半が「係留器具の破損」「玄関ドアの開閉時のすり抜け」「散歩中のリードすっぽ抜け」といった、飼育者の過失に起因する逸走トラブルです。体重40kgを超える土佐闘犬やロットワイラーが住宅街へ脱走した場合、散歩中の小型犬や児童、高齢者が致命傷を負う事態に発展します。
環境省が公表する動物愛護管理行政事務提要のデータによると、全国の自治体に報告される犬による咬傷事故は年間4,000件以上で推移しています。被害者の約半数は通行人などの第三者であり、公共空間における管理責任の徹底が強く求められています。
日本には国レベルでの特定犬種一括禁止法は存在しないものの、自治体の条例(特定犬制度)によって厳格な管理が義務付けられている地域があります。例えば茨城県や札幌市、佐賀県などの条例では、以下のような厳しい飼育基準が定められています。
- 特定犬の指定:土佐闘犬、秋田犬、紀州犬、ジャーマン・シェパード、ドーベルマン、グレート・デーン、セント・バーナード、アメリカンピットブルテリア、および体高・体長が一定基準以上の大型犬。
- 飼育場所の制限:人の出入りがない強固な「檻(おり)」の中での飼育義務、または敷地外へ脱走できない構造の囲い内での飼育。
- 標識の掲示:出入口の見やすい場所に「特定犬」の飼育を示す標識シールを貼付する義務。
- 散歩時の規制:犬を確実に制御できる成人が引き運動を行い、二重リードや口輪の装着を義務付ける規定。
万が一、管理不備によって他人に重傷を負わせた場合、飼い主には過失傷害罪(刑法209条)や重過失致死傷罪といった刑事責任が問われるほか、数千万円規模の民事上の損害賠償請求(民法718条:動物占有者の責任)が命じられる判例が定着しています。