事件直後の世論とインターネット空間は、凄惨な凶行に対する憤号に包まれると同時に、当時の情報化社会が抱える極めて陰湿な側面を露呈させました。
犯人が逮捕直前にネット掲示板上にばら撒いた画像データは、一部の悪質なネットユーザーの手によって瞬く間に転載・拡散されました。「ネットに一度流出したデジタルデータは完全に消滅させることが困難である」というデジタルタトゥーの恐ろしさが、最悪の形で実証された瞬間でした。
当時のネット掲示板やSNSでは、「被害者に隙があったのではないか」という心ない二次被害(セカンドビクティム)の書き込みが一部で見られたものの、それを圧倒する規模で「被害者を中傷・拡散する行為は犯罪に等しい」「警察の初動ミスを徹底追究すべきだ」「プライベート画像を拡散する者を全員特定して逮捕せよ」といった強い怒りの声が広がりました。
報道各社による過熱取材も激しい批判に晒されました。遺族への配慮を欠いた突撃取材やプライバシーの過剰な露出に対し、メディアのあり方そのものを問う市民運動が勃発。この世論の巨大なうねりが、国会を動かし、事件からわずか約1年という異例のスピードで「リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)」の全会一致成立へと直結したのです。