愛知県豊田市周辺に点在するトヨタの独身寮は、単なる寝泊まりの場所ではない。それは「トヨタマン」としての基礎を叩き込む教育の場でもあった。
かつては相部屋が当たり前で、先輩後輩が文字通り膝を突き合わせて暮らしていた。プライベートなどほとんどない。しかし、そこには強い連帯感があった。工場のラインでミスをすれば寮で慰め合い、技術のコツを夜通し語り合う。そうした濃密な人間関係が、世界一の品質を誇るトヨタの現場力を底上げしていたことは紛れもない事実だ。
時代は流れ、プライバシー重視の個室化が進んだ。時代の要請といえば聞こえはいいが、それは同時に、かつての「運命共同体」的な空気の薄れをも意味している。