激震が走る伊勢ヶ濱部屋の内部では、師弟による重苦しい対話が重ねられている。弟子の体を誰よりも理解し、地獄の底から這い上がらせた師匠・伊勢ヶ濱親方の心中も複雑を極める。どれほどの実績があろうとも、相撲を取れない状態の横綱を土俵に送り出すことはできないという指導者としての冷徹な判断と、愛弟子の矜持を尊重したい情情が激しく衝突している。
稽古場では若い衆への指導こそ声を出して行うものの、自らが土俵に降りる時間は限られていた。師匠と横綱が二人きりで話し合う姿が度々目撃されており、部屋関係者も「これまでにないピリピリとした空気」と証言する。情に流されず、力士生命を守るための非情な決断が下される瞬間が刻一刻と迫っている。