皮膚の着色メカニズムが同一であるならば、何が両者を分かつのか。それは「和彫りと洋彫りの決定的な違い」として結実する美学、構成概念、そして施術技法の差異にあります。
和彫りは、日本古来の浮世絵や武者絵、龍、虎、鳳凰、般若、錦鯉といった東洋的・仏教的主題をモチーフとします。最大の特徴は、単一の絵柄を単体で配置するのではなく、身体全体を1枚のカンバスに見立てて構成する点です。絵柄の周囲を「雲」「波」「岩」「桜」「紅葉」などで埋め尽くす「額彫り(がくぼり)」や、衣服を脱いだ際に衣服の襟元や袖口から見えないよう境界線を緻密に設計する「見切り」という厳格な文法が存在します。
一方の洋彫り(タトゥー)は、ポリネシア等のトライバル文様、アメリカン・トラディショナル(オールドスクール)、レタリング、繊細な陰影表現を特徴とするブラック&グレー、極細針を用いたファインラインなど多岐にわたります。洋彫りの本質は「ワンポイント」の自立性にあり、個人のアイデンティティ、祈り、記念、あるいは純粋な装飾品として身体の任意の部分に配置されます。
施術に用いられる道具の差も顕著です。伝統的な和彫りでは、竹や金属の棒の先端に数十本の針を固定した道具を用いる「手彫り」が継承されてきました。対して洋彫りは、19世紀末にエジソンの電気ペンを改良して誕生した電磁コイル式や、現代の主流であるロータリー式の「マシン彫り」が基本です。
多くの経験者が口を揃えるのが、手彫りとマシン彫りの痛みの差です。マシン彫りは毎秒数千回という超高速振動で連続して皮膚を穿孔するため、「患部を針で高速に引っかかれ、摩擦熱でジリジリと焼かれているような鋭い痛み」と表現されます。一方の手彫りは、彫り師が一突きごとに体重と手首のスナップを乗せて皮膚へ針を刺入するため、「皮膚の芯を重い鈍器で突かれるような、深部に響くズッシリとした衝撃痛」を伴います。皮膚への熱ダメージ自体は手彫りのほうが少ないため、施術後の肌の回復(治癒プロセス)は手彫りのほうが穏やかであるという熟練彫り師の証言も少なくありません。