「焼き鳥の味は、鶏の鮮度が4割、火入れが4割、残りの2割がタレと塩の匙加減だ」。都内某所で半世紀にわたり炭の前に立ち続けるベテラン職人はそう語る。赤々と燃える炭の遠赤外線で表面を瞬時にパリッと閉じ込め、中に肉汁を閉じ込める技は、長年の勘と身体感覚だけが頼りだ。
また、継ぎ足し続けられた秘伝のタレは、店の歴史そのものと言える。肉の脂が溶け込み、旨味が凝縮されたタレにくぐらせた皮やレバーは、一口噛み締めれば口いっぱいに芳醇なコクが広がる。塩加減ひとつにとっても、その日の湿度や客の酒の進み具合に合わせて微調整を行うという徹底ぶりが、客をリピーターへと変えていく。