「国立競技場はトラックがあるからピッチが遠くて見づらいのではないか」という懸念は、観戦初心者が最も抱きやすい疑問の一つです。結論から言えば、傾斜角の設計によって各層ごとに観戦体験は全く異なります。ピッチレベルに近い1層目は選手同士の激突音やスピード感を肌で体感できる一方、前方の傾斜が約20度と緩やかなため、逆サイドの展開や奥のゴール前の攻防が前の観客の頭と重なりやすい特徴を持ちます。
対照的に、2層目(傾斜約29度)から3層目(最大約34度)に上がると視界は劇的に開けます。特に3層目はすり鉢状の急勾配となっており、ピッチ全体をまるでテレビの戦術カメラで見ているかのような立体的な視野が広がります。選手一人ひとりのオフ・ザ・ボールの動きやフォーメーションの歪みまで克明に把握できるため、玄人サポーターの間では「あえて3層目の前段を指名買いする」という選択肢が定着しています。
一方、チケット倍率が高騰する背景には、近年のJリーグが推進する「国立ビッグマッチ戦略」が深く関係しています。FC東京やFC町田ゼルビア、鹿島アントラーズなどが主催する国立開催試合では、5万人規模の動員を記録することが常態化しました。さらに、サッカー日本代表戦や元日・秋開催のルヴァンカップ決勝、天皇杯決勝などのタイトルマッチでは、指定席の一次先行抽選で予定枚数を大幅に上回るエントリーが集中します。クラブの有料ファンクラブ上位会員枠であってもメインスタンド側良席はプラチナ化しており、一般販売開始から数分でリセール待ちに突入するケースが珍しくありません。