ドラマ『相棒』を象徴する杉下右京の紅茶シーン。ポットを頭上近くまで高々と掲げ、極細の糸のように紅茶をカップへ落とし込むあの美しい所作は、一体どのようにして生まれたのでしょうか。
当時の特番インタビューや制作陣の回想録によると、初期の脚本には単に「右京、紅茶を飲む」としか書かれていませんでした。撮影現場に入った水谷豊が、「右京という男の風変わりな天才性や、英国帰りのエレガントな変人ぶりを視覚的にどう表現するか」を思案した末、テスト撮影の段階で突如繰り出したのがあのアクションでした。
水谷自身が公の場で語ったところによると、若い頃に訪れたイギリス・ロンドンのティールームや、モロッコなどで親しまれるミントティーを高い位置から泡立てて注ぐ伝統的な給仕作法が頭の片隅にあったといいます。「紅茶に空気を含ませて香りを開かせる」という本格的な抽出理論と、「一風変わった右京のキャラクター造形」が見事に融合した結果、監督も絶賛して即座に本編採用が決まりました。