自由民主党の最大派閥「木曜クラブ」(田中派)を率い、影の総理として政界に君臨し続けた田中角栄。その凄烈な政治手腕の根底にあったのは、規格外の人間力と記憶力だ。官僚たちの名前や家族構成、地元の懸案事項を暗記し、相手の欲しいものを即座に見抜いて与える。
早坂繁雄は、角栄が官僚を心服させた「凄み」のメカニズムを解説している。予算の膨大な数値を諳んじ、政策の優先順位を瞬時に判断する明晰さ。それでいて、下っ端の職員にまで労いの言葉をかける気配り。単なる金権政治という言葉だけでは括りきれない、圧倒的な人心掌握の凄みがそこにはあった。