雲と地震の関係を追究しようとした試みは、決して最近始まったものではない。大正から昭和初期にかけて、物理学者・随筆家として知られる寺田寅彦は、地震発生時の大気現象や電磁気的な異変に関心を寄せ、宏観異常現象(前兆と思われる自然現象)の科学的な解明に向けた基礎的知見を提示した。
その後、大阪市立大学名誉教授を務めた弘原海清は、市民から寄せられた膨大な目撃証言を集約し、前兆現象のデータベース化に取り組んだ。弘原海清の研究は、宏観異常を社会的な関心事として定着させる契機となったが、現代の地震学における評価は冷徹だ。目撃情報の多くは「地震が起きた後に過去の記憶を遡って奇妙な雲を思い出す」という心理的な認知の偏り(確証バイアス)の影響を強く受けており、再現性のある科学データとしての立証には至っていない。