天文学において、太陽と地球の距離はあらゆる宇宙のものさしの基準点として機能してきました。一般に「約1億5000万km」と丸めて語られることが多いものの、天文学的な公式値としての太陽と地球の平均距離は、国際天文学連合(IAU)の決定により正確に1億4959万7870.7km(149,597,870,700m)と定められています。この距離こそが、太陽系内の距離を表す基本単位である天文単位(AU: Astronomical Unit)の正体です。
かつて天文単位は「太陽の周りを円軌道を描いて回る仮想の粒子の公転周期」など、力学的な測定値に基づいて定義されていました。しかし天体観測技術が飛躍的に進歩するにつれ、相対性理論による時空の歪みや観測地点の違いによってわずかな誤差が生じることが問題視されるようになります。そこで2012年のIAU総会において、従来の観測依存の定義を改め、いかなる測定環境にも左右されない「固定されたメートル値」として再定義されました。これにより、現代の天文学や深宇宙航行計算における揺らぎのない絶対基準が確立されたのです。
さらに宇宙の広大なスケールを語る際によく用いられる「光年」に換算してみると、新たな視点が得られます。1光年とは光が真空の中を1年間かけて進む距離であり、約9兆4600億kmに相当します。これを基に計算すると、1天文単位(AU)は約0.0000158光年にすぎません。銀河系や隣の恒星系(約4.2光年離れたプロキシマ・ケンタウリ)と比較すれば、太陽と地球の距離は宇宙規模で見ると文字通り「指先が触れ合うほどの至近距離」に位置していることがわかります。