幼少期の交通事故という凄惨なトラウマをきっかけに、曜日ごとに人格が入れ替わる「解離性同一性障害」を抱えることになった主人公。7つの人格はそれぞれ「月曜日」「火曜日」……と曜日名で呼ばれ、部屋に残す付箋や交換日記、厳格に定められた生活ルールを介して、まるで顔を合わせないルームシェアのような平穏な共生関係を維持していました。
物語の主軸となるのは、7人の中で最も地味で真面目、損な役回りばかりを押し付けられている「火曜日」です。ゴミ出しや掃除、定期通院といった雑用を一手に引き受け、世の中の公的施設が休館することの多い火曜日ゆえに、大好きな図書館に行くことすら叶わない慎ましい日常を送っていました。ところがある朝、目覚めた火曜日は部屋の異変に気付きます。点けたテレビの画面には「水曜日」のテロップが流れ、街の図書館も開館していました。本来現れるはずの「水曜日」が目覚めず、火曜日がその枠を飛び越えて活動を維持していたのです。
初めて訪れる水曜日の世界に歓喜し、図書館の司書である高橋瑞野(深川麻衣)や元同級生の一ノ瀬晶(石橋菜津美)と交流を深める火曜日。しかし、その甘美な日常は急速に崩壊へと向かいます。水曜日だけでなく木曜日や金曜日へと意識の侵食が広がるにつれ、激しい頭痛や記憶の混濁、不可解な幻視が身体を襲い始めます。
では、なぜ突如として水曜日は消滅したのか。その真相は、身体の活動可能時間を徐々に広げ、他の人格を排除して身体を完全に乗っ取ろうとしていた「月曜日」の謀略にありました。週の始まりとして社会的な重圧を背負い、夜の路上ライブや人間関係の摩擦に苛まれていた月曜日は、新木医師の後輩である安藤医師(中島歩)と結託。他の人格を消滅させ、自分だけの単独意識へとまとめ上げる「人格統合手術」を受ける手筈を極秘裏に進めていたのです。水曜日の消失は、月曜日の意識が脳の覚醒領域を強引に拡大したことで生じた、システム崩壊の前兆に過ぎませんでした。