30代後半を迎えたアスリートにとって、体のメンテナンスとコンディション維持は20代の頃とは比べものにならないほど過酷だ。度重なる手術、リハビリ、ランキングの降下。全米オープン準優勝という栄光を知る男にとって、思い通りに動かない身体と向き合う時間は、精神を削り取るような苦痛であったはずだ。
コート上で孤軍奮闘する錦織だが、コートを降りれば安らげる居場所が存在する。試合に勝った日も、思うようなプレーができずに悔しさを噛み締めた日も、自宅には変わらない日常が待っている。感情の波を静かに受け止める妻の存在が、復帰への情熱を途絶えさせない最大のエネルギー源となっていることは疑いようがない。過剰な華やかさを避け、アスリートの生活リズムに寄り添う姿勢こそが、長きにわたる現役生活を支える隠れた原動力なのだ。