なぜ大根おろしの汁はこれほどまでに力強く、時に胃を痛めつけるのか。その謎を解く鍵は食品科学の領域にある。大根の細胞が破壊された瞬間、解毒酵素と基質が混ざり合い、強力なアリルイソチオシアネートという辛み成分が生成される。この成分こそが、強力な抗酸化作用や抗菌作用、さらにはがん予防効果まで期待されるファイトケミカルの代表格だ。
同時に、大根には炭水化物の消化を助ける酵素ジアスターゼ(アミラーゼ)が豊富に含まれている。消化器内科学の観点からも、胃もたれや食傷の改善に寄与する優秀な成分として知られている。しかし、これらの有用成分は水溶性であり、すりおろした際に出てくる汁の方へ大量に溶け出してしまう。生のイソチオシアネートが空腹の胃粘膜に直接触れれば、強い刺激によって胃痙攣のような症状が生じるのは科学的にも必然と言える。