東海道五十三次の中でも、丸子宿の風景は異彩を放つ。歌川広重が描いた「丸子 名物茶店」の図には、藁葺き屋根の茶屋でとろろ汁を美味しそうに頬張る二人の旅人が描かれている。驚くべきは、その絵に描かれた風情が、今もなおこの場所でそのまま息づいている事実だ。
江戸時代の旅人にとって、箱根の険しい山越えや大井川の川越しを控えたこの地でいただく自然薯は、明日への滋養強壮そのものだった。松尾芭蕉もまた「梅若菜 丸子の宿の とろろ汁」と詠み、この味覚を絶賛している。400年以上の時を経た現代において、同じ場所で、同じ自然薯の滋味を噛み締められる奇跡。これこそが、他にはない圧倒的な歴史の説得力だ。