日本国内における本作の爆発的ヒットを支えた最大の要因の一つが、極めて完成度の高い日本語吹き替え版のキャスティングです。主役のラプンツェルをはじめ、登場人物たちの声には舞台・演劇界のトップランナーが集結しました。
公開当時、ファンの間で大きな注目を集めたのが、ラプンツェルの台詞と歌唱を異なるキャストが担当する「声の分業制」でした。巨匠アラン・メンケンが手掛けた「自由への扉(When Will My Life Begin?)」や「輝く未来(I See the Light)」は、ブロードウェイ最高峰の音域と表現力が要求される難曲です。ディズニー本社の厳しい音楽監修オーディションを突破した実力派ミュージカル女優・小此木麻里(現・小此木まり)の澄み渡る歌唱と、中川翔子の感情豊かで躍動感あふれる声の演技が奇跡的なレベルで融合し、違和感のない完璧なヒロイン像を完成させました。
中川翔子自身、当時のインタビューや手記において「大好きなディズニーのヒロインを演じるにあたり、作品の世界観を完璧なものにするため、歌唱のスペシャリストとバトンをつなぐことができたのは無上の喜び」と述懐しています。二人の才能がリスペクトし合った結果、主題歌「輝く未来」は第83回アカデミー賞歌曲賞にノミネートされるなど、世界的な音楽的評価を確固たるものにしました。