蒙武の評価を決定づけた屈指の戦闘といえば、函谷関攻防戦(合従軍編)における楚軍総大将・汗明(かんめい)との一騎打ちです。中華最強を自負する巨人・汗明に対し、左腕を砕かれ頭部を強打されながらも、息子の蒙恬が斬られた怒りと「中華最強の証明」という執念で逆転。大槌のような巨大な棍棒で汗明の頭部を叩き潰したシーンは、本作屈指のバイオレンスかつ熱狂的な名場面として語り継がれています。
この戦いで放たれた「俺が天下最強の男だ」「蒙武の前に敵は無し」という咆哮は、読者の魂を揺さぶる名言として刻まれました。
単なる力押しの将からの脱皮を見せたのが、魏軍(呉鳳明)と同盟を組んで挑んだ「什虎の戦い」です。楚の異端の将・満羽(まんう)との激闘において、蒙武は「背負うものを失った虚無の強さ」を突きつけられます。かつては個の力のみを信じていた蒙武が、昌平君との約束や家族、背負うべき重圧を受け止め、苦悩しながらも前進する姿は、精神的な円熟と大将軍としての深みを感じさせました。