菌血症を取り巻く情報の中には、患者や家族が判断を誤りやすい危険な落とし穴がいくつか存在します。ネット上の俗説や誤解を正し、正しい認識を持つことが肝要です。
誤解1:「市販の解熱鎮痛薬で熱が下がったから大丈夫」
解熱薬(アセトアミノフェンやロキソプロフェンなど)を飲むと、視床下部への作用で一時的に熱が下がることがあります。しかし、これは症状を覆い隠した(マスキングした)に過ぎず、血液中の細菌が死滅したわけではありません。薬の効果が切れた瞬間に再び急激な悪寒と高熱がぶり返し、その間に臓器不全が静かに進行してしまうリスクがあります。
誤解2:「抗生物質を数日飲めば通院で治る」
一般的な扁桃炎や膀胱炎であれば内服抗菌薬で治療可能ですが、菌血症は原則として「入院の上、点滴による抗菌薬投与」が必要です。血液中の細菌濃度を確実にゼロにし、心臓弁や骨への細菌定着(転移性感染)を防ぐためには、経口薬では達成困難な高濃度の血中薬剤濃度を一定期間保ち続ける必要があるためです。
【プロの結論】早期受診すべきハイリスク層と家族が見極めるべき判断基準
すべての発熱が菌血症につながるわけではありませんが、以下の「ハイリスク条件」に当てはまる人が急激な発熱や悪寒戦慄を起こした場合は、迷わず救急外来を受診、あるいは救急要請(119番)を検討すべきです。
- がん化学療法中、または免疫抑制薬・ステロイドを長期服用している人
- 中心静脈カテーテル、尿道留置カテーテル、透析シャントを使用中の人
- 心臓の人工弁置換術や弁膜症の既往がある人
- 人工関節置換術を受けたことがある人
- 糖尿病のコントロールが不良な人、または肝硬変・慢性腎不全を患っている人
- 80歳以上の高齢者で、急激な意識レベルの低下や反応の鈍さが見られる場合
「明日まで様子を見よう」という半日の遅れが、救命率を大きく左右します。特にハイリスク層の家族は、平時から主治医への連絡手順を確認しておくことが不可欠です。