中山美穂さんのヘアスタイルの歴史は、まさに日本のカルチャーシーンの変遷そのものです。デビュー初期の1980年代、ふんわりとしたレイヤーや動きのあるロング・ミディアムヘアで日本中を魅了した彼女は、年齢とキャリアを重ねるにつれて、より洗練されたミニマルなショートヘアへとシフトしていきました。
なかでも社会現象とも呼べる影響を与えたのが、1995年公開の岩井俊二監督映画『Love Letter』です。雪景色の中に佇む彼女のショートカットは、飾らないストレートタッチの毛先と、耳にふんわりとかかるサイドのラインが印象的でした。どこか無防備で儚げな主人公の心情を完璧に表現したこのスタイルは、アジア各国でも爆発的なブームを巻き起こしました。
さらに1996年の名作ドラマ『おいしい関係』では、フレンチシェフを目指す主人公・藤原百恵役として、上品で小粋なフレンチショートボブを披露。コックコートの襟元に美しく収まるコンパクトな後頭部の丸みと、サイドに柔らかな動きを持たせたデザインは、大人の女性が街で真似したいヘアスタイルとして美容室にオーダーが殺到しました。この2大傑作で見せたスタイルは、今見ても完璧な完成度を誇っています。